スパイ






恐ろしい、と思うのです。

いつも笑顔を絶やさなくて、太陽みたいで。慈愛のカタマリのようなアナタを。


アナタがオレに口付けるときに
おかえりなさい、と微笑む時に
オレの頬を、温かな手のひらがそっと包む時に

「愛してる」とアナタが囁く。


ふとしたときに、アナタがオレの目を見て、
そうして、この上なく幸せそうに、唇をほころばせる時



―――オレは凍りつく。



やめてイルカ先生。そんなふうに綺麗に笑わないで。


オレはもう、アナタが敵でオレの命を狙うためにオレに近付いてきたんだとしても
きっとアナタを殺せない。