「イルカセンセ、オレ、一週間後に任務が入りました」  





いつものように俺の家に夕食をたかりに来た後、勝手に居間で寛ぐ銀色の上忍が
番茶を啜りながらぽつり、と漏らした。

は、とそれに鼻先で答え、取り合えず一本調子な合いの手を返してやる。

「へえ・・・そうなんですか。いつ戻られるんですか?」

「10年後」

「じゅ・・・!?」


思わず持っていた急須を落としそうになった俺を見て、カカシさんはふっと笑うと 静かに視線を逸らした。

「冗談ですって。冗談〜」

「なんです・・・もう。本当はどのくらいなんですか」

「そうですね、半月・・・短くて、一週間くらいですか」


それを聞きながら、俺は内心酷く赤面していた。
思わず動揺してしまって・・・何なんだ、俺。
好都合じゃないか。この煩い人とそれだけ顔を合わせなくていいなんて。



「でもね、イルカセンセイ」

泳いでいた俺の目を、彼の視線が捕まえる。


「もし、オレがずっと帰ってこなくても、アナタは待っててくれる?」


彼の色違いの双眸が、ひたと俺を見据えていた。
俺は思わず動きをとめて、彼を凝視する。

「・・・何ですかそれは・・・本気で言ってるんですか」

「例えばの話です。例えば」

「10年ですか?馬鹿らしい」

待ってられるわけないでしょう。
大体、いつあなたと俺がそういう関係に?


「あなたがいなくなったら俺は清々して、新しい可愛い彼女でも探しますよ。今まで散々、誰かさんのせいでコブつきだの何だの言われてきた身からやっと解放されて、そりゃぁもう、気持ちいい毎日をおくれるでしょうね」



「そう、ですよね」


少しの沈黙の後、手元の湯飲みから視線を上げた彼は、俺に向かって曖昧に笑った。



「ねぇ、イルカセンセ 好きって言って?」