「突然ですけど、イルカセンセの初恋ってどんなですか?オレはね〜、聞いて驚かないでくださいよ?なな、なんと、イルカセンセイなんですっ!!キャ〜ッvv(奇声)ね、興味ありませんかこの話っっ!?」



「あ〜・・・全くないですね。すんませんけど採点終わるまであっち行っててもらえませんか(片手間)」


「・・ひ、酷い・・・っ!!ま、そんな今のアナタも好きなんですけどね、オレの初恋ってのはちゃんともっとガキの頃の話ですよ。実はガキの頃、オレ、イルカセンセと会ってるんですよね〜v
あの頃はまだ外の任務とかも少なくて、わりと里に居られたんで、そんときに。
・・・あ〜・・・可愛かったなぁあの頃のセンセ・・・vvや、もちろん今も可愛いですよッ!?けど、あの頃のわんぱくそうで黒いおっきな目がくりっくりしてて、セクシーな生脚をこれでもか!ってほど見せまくってころころ駆け回るイルカセンセ、ほんっとうに可愛かったですヨ〜vv
アナタいつでも短パンをひらひらさせて転げ回るもんだから、も〜ホントにきわどいとこまで見えそうになるのをドキドキしながら見詰めてた覚えありますね。そりゃもうず〜っと。ず〜〜〜〜っと。よく火影様に怒られたもんですよー。お前は任務もほっぽってなにやっとんじゃーって、ね☆
その後外勤でしばらく里離れたから会えなくなっちゃったけど、大人になって手を尽くしまくってアナタを見つけたとき、もーほんとに全然変わってないもんだから嬉しくって!もう!!・・・・・って、聞いてます?」

「・・・・」

「・・・・・・イルカセンセ・・・?」

「・・・・・(視線に気付く)あ?あぁ、すんませんカカシさん。何ですか?」

「・・・聞いてました?オレの話」

「あっはっは!やだな〜カカシさん。もちろん聞いてないに決まってるじゃないですか。ていうかあっち行ってろって言っただろうが(低音)」

「うううぅ酷いよ〜センセぇ(涙)オレの大事な初恋メモリーを・・・てか、イルカセンセの初恋も教えてくださいってば!!」

「初恋?やですよ。どうせあんた、『オレじゃないんですね?』とか『オレはこんなにアナタのことを思ってるのに!アナタは違うんですね?』・・・とか適当な理由つけて、『そんなの理不尽だから、じゃあ今夜は酷くしちゃいます〜』とか言って押し倒すつもりでしょうが。あいにく俺今日は忙しいんで」

「そんなことしません〜!純粋にセンセの初恋話を聞いてみたいだけですよ!!いいじゃないですか。ねぇ〜」

「・・・・・初恋・・・ねぇ。言っときますけど、俺、普通に 女の子が好きでしたからね。まかり間違ってもあんただった、なんて、そんな気の利いたこと言いませんからね。それでもいいんですか?」

「!!・・・・・うぅ・・・く、悔しいけどいいですよ・・・アナタの初恋、どんな人か聞いてみたいもん」

「ん〜・・・んじゃまぁ、お話しますけど。そうだなぁ・・・(肘をついて遠い目)あぁ、あれは俺がアカデミーに入ってすぐ
くらいでしたかね。なんかすっごい可愛い子がいましてね」

「・・・・く・・・(涙)・・・・・・・・・そ、それで?」

「とにかくめちゃくちゃ可愛いんですよ!髪の毛とかふわっふわしてて。色が白くてすごい華奢でね。多分北方の出だったんじゃないかな?髪とか目とか、色素が薄くてすごくきれいだったんですよ。肌とかもきめ細かくて、ほっぺたとか、皮膚が薄いもんだからほんとにバラ色で」

「ちょっとまったちょっとまった!!ってイルカセンセ!!アンタ、その子に触ったりとかしてたわけですかッ!!?」

「ちょ、人聞き悪いですね。俺そんなにマセガキじゃなかったですよ。・・・実は触るどころか、喋ったことすらなかったんですけど。いつも俺たち男連中が遊んでるのを、ちょっと離れたとこから見てたんですよね、彼女。
同じクラスじゃなかったし、他のクラスにも居なかったから、多分学年が違ったと思うんです。
・・・あぁ、でも あんなに小さかったんだからきっと
1つ下、とかそんなだと思いますよ。ほんと、可愛かったんです」

「・・・・・・・へぇ・・・・そうですか・・・・よく見てるじゃないですか・・・・(涙目)」

「そりゃもう、美人でしたから。あ!でも、ちょっと自慢できることあるんですよね、俺。
実はね 彼女、俺のこと好きだったと思うんですよ」

「・・・・・へ〜え?」

「ちょっと!今自意識過剰だとか思ったでしょう!?本当にそうなんですったら。俺が遊んでると、いつの間にか離れた所からこっち見てるし、遊び場を変えても、絶対についてくるし。
それが毎日なんですよ毎日!他の奴らじゃなくって、絶対俺んとこに来るんです。
俺が一人で忍術の練習してても、見に来たりしてたし。買い物行っても、家に帰るときも、なんか視線を感じるな〜と思ったら居るし・・・あ・・・そうそう。便所にまでついてこられたことありましたよ!便所ですよ?便所。
当然びっくりするじゃないですか。でも彼女、なんだかもじもじしながら俺の方凝視してて。
え、何だ?って思って話し掛けようとした途端、彼女真っ赤になって逃げちゃったんですよね〜。
そりゃもう素早かったですよ!いいくの一になるだろうなーと思いました。
ね?ほら、もう絶対彼女、俺に気があったと思いません?」

「・・・・・」

「・・・とか言っても、ほんとのところはどうだか、分からないんですけどね。まぁ、俺の希望的観測ですよ。
“真っ赤になって”とか言いましたけど、本当は彼女、大概の時は口布で顔覆ってましたから、はっきりとは見えませんでしたし。」

「・・・・・口布・・・?」

「えぇそう。律儀なもんでしょう?あんな小さい頃からきっちり忍びの教えを守ってたわけですから。
あぁ、そういう何だかきちきちしてそうなところも好きだったなぁ。服だってピンクとか赤とか可愛いの着りゃいいのに、ずっと硬派に紺の上着とズボンでしたしね。
きっと仕事をきっちりこなして、尚且つ家事にも手を抜かないような、いい奥さんになるだろうなと子供心に」

「・・・・・・・ちょっと待ってくださいよ・・・その子、腹の前でばってんが出来るようなサスペンダーに、灰色のショートパンツはいてませんでした?」

「な・・・っ!!や、やめてくださいよカカシさん!!!あんた、今俺の頭ん中見たでしょう!?やだなぁ!写輪眼ってのはそんなことも出来んですかッ!?もう、ちょっと変なことすんのやめて下さい・・・。
本当は俺だってこうして思い出すの つ・・・っ 辛いんですから・・・」

「・・・・・・・え?辛い?」

「えぇ・・・・彼女ね、それからしばらくして、居なくなっちゃったんですよ。
当然、俺びっくりして、あちこち探し回ったんです。何しろ初恋の相手ですからね。もう必死で。・・・けど、見つからなかったんですよ。くの一クラスを片っ端から調べたんですけど、そんな子、いなくて。
もちろんアカデミー中全部ですよ?親の任務の都合で転居になった子だってしらみ潰しに当たったんです。
最後には火影様に泣きついて、これこれこういう女の子がいたんだけど居なくなっちゃったんです、探してください・・・って。
・・・でも、火影様にも分からなかったんです。・・・・と言うか・・・ね。
――――火影様、俺にわからないふりをしたんですよ。
俺が火影様に彼女のことを打ち明けた時、火影様、一瞬これでもか!ってほど驚いた顔して、その後、ものすごく不憫そうな目で俺を見て。
・・・・・きっと彼女、もう死んでしまっていたんですよ・・・・。う・・・っ・・・
火影様、俺にそれを知らせまいとして、それで・・・・っ」

「・・・イ、イルカセ」

「(涙を振り切って)もちろん!!もちろん、教職についてからも散々手を尽くしてその子のこと調べましたよ!!
けど、誰一人、彼女のことを知らないんです・・・。そんな女の子、アカデミーで一緒になったこともないと!
・・(声が震えて)・・・き、きっと、他の里からの抜け忍だとか、スパイだとか・・・そういうのだったに違いないんです・・・
でも、それでも!俺の彼女を思う気持ちは変わらなかったッ!!俺はそんな彼女と一緒になって、彼女を守りながら仕事に行き、彼女は家でおいしいご飯を作って待ってくれている!
そんな、そんな家庭を築きたかったんです・・・ッッ!!!(涙)」

「・・・・・・えぇと・・・イルカ先生・・・・・?
・・・・オレ、小さい頃、任務が少ない時には里にずっと居たりとか、したんです・・・けど・・・・・・?」

「・・・・・・(ハンカチで鼻をかみながら)・・・は?あぁ、さっきの話のことですか?それが何か?」

「・・・・・・・・・・オレ、イルカセンセのこと好きで、ずっと見てたりしたんです・・・けど・・・・・・・・・」

「・・・(涙にくれながら)はぁ。そりゃ、気づいてやれなくてすみませんでしたね。・・・・・うぅ・・・・俺があの時勇気を出して彼女に話し掛けていたら・・・・!あんなに可愛かったのに、かわいそうに・・・・ッ(男泣き)」

「・・・・・」

「(涙を拭きながら)・・・・俺の初恋話は、これで終わりですよ・・・。どうです?聞かなきゃ良かったでしょう?」

「・・・・や・・・・何と言うか・・・・」

「すんませんね、気の利いたこと言えなくって。けどまぁ、昔の話です。今はそれなりにあんたが好きですよ」

「・・・・・・・・・・どうも。・・・・・というか、イルカセンセがどんな話をしても、『オレじゃないんですね?』とか『オレはこんなにアナタのことを思ってるのに!アナタは違うんですね?』・・・とか適当な理由つけて、『そんなの理不尽だから、じゃあ今夜は酷くしちゃいます〜』とか言って押し倒すつもりだったんですが」

「(・・・こいつ・・・)」

「・・・・けど、何と言うか・・・・・自分の中で何かがみるみるしぼんでいくというか・・
・・・・こう、滾っていたものが萎えるというか・・・」

「・・・はぁ? ああ、熱い話聞かせちゃってすいませんでしたね」

「いえ・・・えっと、じゃあとりあえず、オレ 飯作ります」

「え?・・・あ、有難うございます・・・・?」

「・・・えぇ・・・」







君の知らないことだってあるさ